- 神経ブロック注射とは
- 神経ブロック注射の種類
- 神経ブロック注射の対象となる病気
- 神経ブロック注射で期待できる効果
- 神経ブロック注射の流れ
- 神経ブロック注射の費用
- 神経ブロック注射の注意事項・副作用
- 神経ブロック注射のよくある質問
神経ブロック注射とは
神経ブロック治療は、神経やその周辺に局所麻酔薬、ステロイドなどを注射することで、痛みの伝わる経路を遮断し、痛みを和らげる治療法です。
痛み止め・湿布・電気治療
との違い
神経ブロックは局所麻酔薬などを神経やその周辺に注射し、痛みの信号が脳に伝わる経路そのものを遮断します。原因となっている神経の興奮を直接抑えるため、比較的即効性があり、強力な鎮痛効果が期待できます。また、交感神経の働きを抑えることで血流改善や炎症抑制にもつながることがあります。効果の持続時間は、ブロックの種類や使用する薬剤によって数時間から数週間と幅があります。
神経ブロック
注射を伴うため、他の治療法に比べて侵襲(体の負担)が高いと言えます。
痛み止め(内服・外用)
比較的低侵襲な治療法です。
電気治療
皮膚の上から電気を流すため、最も低侵襲な治療法の一つです。
神経ブロック注射の種類
神経ブロック注射には、様々な種類があり、痛みの種類や部位、原因、患者様の状態に合わせて選択されます。主なものを以下に挙げます。
神経系のブロック
硬膜外ブロック注射
脊髄を覆う硬膜の外側の空間(硬膜外腔)に局所麻酔薬などを注入します。
腰痛、下肢痛、帯状疱疹、手術後の痛みなど、広範囲の痛みに効果があります。
注入部位により、頸部硬膜外ブロック、胸部硬膜外ブロック、腰部硬膜外ブロック、仙骨硬膜外ブロックなどに分類されます。当院では仙骨硬膜外ブロックを主に取り扱うことができます。
神経根ブロック注射
脊髄から枝分かれする神経の根元(神経根)に局所麻酔薬などを注射します。
腰の神経からの特定の神経の走行に沿った痛みに対して高い効果が期待できます。
レントゲンもしくはエコーガイド下に行います。
末梢神経系のブロック注射
手や足の神経に局所麻酔薬などを注入します。
炎症し興奮した神経を鎮静化することでつらい症状を和らげることを目的としていま。
トリガーポイント注射
筋肉や筋膜にある痛みの原因となるところに直接、局所麻酔薬などを注射します。
肩こり、腰痛、筋肉痛など、筋膜性の痛みに有効です。
当院では、必要時、超音波ガイド下に神経ブロックを行うことで、より安全かつ正確に神経の近くに注射することが可能になり、合併症のリスクを減らし、治療効果の向上を目指しています。
神経ブロック注射の
対象となる病気
上記以外でも対応できる疾患がありますので当院へお気軽にご相談ください。
神経ブロック注射で
期待できる効果
痛みの軽減・緩和
- 直接的な鎮痛効果: 局所麻酔薬などにより、痛みの信号が脳に伝わる経路を一時的に遮断することで、速やかに痛みを和らげます。
- 慢性痛の悪循環を断ち切る: 痛みが続くことで生じる筋肉の緊張や血管の収縮、精神的なストレスなどを軽減し、痛みの悪循環を断ち切る効果が期待できます。
- 炎症の抑制: 一部の神経ブロック(特にステロイドを併用した場合)では、炎症を抑える効果が期待できます。
診断的治療
- 痛みの原因部位の特定: 特定の神経をブロックすることで、痛みが軽減するかどうかを確認し、痛みの原因となっている神経や部位を特定するのに役立ちます。
治療効果
- 血流改善: 血管を拡張させ、血流を改善する効果が期待できます。これにより、組織の酸素供給が改善され、痛みの軽減や治癒の促進につながることがあります。
- 筋肉の緊張緩和: 痛みが原因で緊張している筋肉を緩める効果があります。
- 関節可動域の改善: 痛みが軽減することで、動きが制限されていた関節の可動域が改善することがあります。
リハビリテーションの促進
痛みが軽減することで、リハビリテーションをより積極的に行えるようになり、機能回復を促します。
神経ブロック注射の流れ
1事前準備・問診
- 神経ブロックの説明: 治療の目的、方法、期待される効果、起こりうる副作用、注意点などについて院長および看護師から説明があります。
- 同意書の確認: 内容を理解した上で、患者さんが治療に同意する署名をします。
- 体位の準備: 注射する部位やブロックの種類に応じて、適切な体勢をとります。
注射後安静にしていただくため、事前にお手洗いに行っておいてください。
2注射の準備
- 注射部位の消毒: 注射する皮膚を消毒します。
- 局所麻酔(皮膚麻酔): 注射の際の痛みを和らげるために、皮膚に局所麻酔を行うことがあります。
- 穿刺・神経の確認:
超音波ガイド下: 超音波画像で神経や血管の位置を確認しながら、より正確に針を進めます。
レントゲン下: レントゲンで針先の位置を確認しながら進めることがあります。 - 薬液の注入: 正しい位置に針が到達したことを確認後、局所麻酔薬やステロイドなどの薬液をゆっくりと注入します。
3注射後
- 安静: 注射部位を圧迫止血し、しばらくの間(通常30分~1時間程度)ベッドなどで安静にします。
- 経過観察: 血圧、脈拍、呼吸などの全身状態、注射部位の痛み、麻痺、しびれなどの症状を観察します。
- 効果判定: 痛みの軽減具合や、感覚の変化などを確認します。
- リハビリテーション(必要な場合): 必要な場合、後日、リハビリテーションを行います。
- 日常生活の注意点などの説明: 入浴、運動、仕事など、日常生活における注意点について院長または看護師から説明があります。
- 帰宅: 状態が安定していることを確認後、帰宅となります。場合によっては、付き添いが必要となることがあります。
効果判定のため受付で次回予約をします。
4帰宅後
- 安静: 注射して24時間は無理な運動や重労働を避け、安静に過ごします。
- 入浴: 指示に従い、24時間はシャワーのみにしてください。
- 状態観察: 注射部位の腫れ、痛み、出血、感染兆候(発熱、赤み、熱感など)、麻痺、しびれなどの症状に注意し、異常があればすぐにご連絡ください。
神経ブロック注射の費用
神経ブロック注射の費用は、保険適用となる場合がほとんどです。そのため、自己負担額は通常1割から3割となります。
具体的な費用は患者さんの保険の種類によって大きく変動します。
トリガーポイント注射 | 数百円~1,000円程度 |
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仙骨硬膜外ブロック | 1,000円~3,000円程度 |
神経根ブロック | 4,000円~6,000円程度 |
その他 |
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(ブロックの種類によっては自費診療となるものもあります。)
神経ブロック注射の
注意事項・副作用
一般的な注意事項
- 医師への情報提供: 既往歴、アレルギー、内服中の薬(特に血液をサラサラにする薬)について、事前に必ず医師にお伝えください。
- 注射後の安静: 注射後、通常15分~30分程度は院内で安静にし、体調の変化を観察します。
- 当日の入浴: 深部に注射した場合など、種類によっては当日の入浴を控えるよう指示することがあります。シャワーは翌日から可能です。
- 激しい運動: 注射当日は激しい運動を避けてください。
- 運転: 局所麻酔の影響で一時的に感覚が鈍くなることがあるため、注射後すぐには車の運転を控えてください。
- 指示の遵守: 医師や看護師の指示をしっかりと守ってください。
- 体調変化の報告: 帰宅後、注射部位の異常な痛みや腫れ、発熱、しびれ、麻痺などが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
主な副作用
- 注射部位の痛みや腫れ: 注射針による刺激や薬剤による反応で起こることがありますが、通常は数日から1週間程度で自然に治まります。
- 内出血: 注射の際に血管を傷つけてしまうことで起こることがありますが、時間とともに吸収されます。
- 感染症: 注射部位から細菌が侵入することで起こる可能性があります。清潔を保つことが重要です。
- アレルギー反応: お薬に対して、発疹、かゆみ、呼吸困難などのアレルギー反応が起こる可能性があります。
- 神経損傷: まれに、注射針が神経に触れてしまい、一時的または永続的なしびれや麻痺が生じることがあります。
- 局所麻酔中毒: 大量の局所麻酔薬が血管内に入ってしまった場合に、めまい、耳鳴り、舌や口のしびれ、視覚異常、けいれん、意識消失などが起こる可能性があります。
- 一時的な運動麻痺・感覚障害: 注射した麻酔薬の影響で、一時的に足に力が入りにくくなったり、感覚が鈍くなることがあります。麻酔の効果が切れれば回復します。
- 重篤な副作用は非常にまれですが、以下のようなものが報告されています。
硬膜外血腫、膿瘍、神経根損傷
神経ブロック注射の
よくある質問
神経ブロック注射について、よくある質問をまとめました。
効果について
神経ブロック注射はすぐに効果が出ますか?
注射する薬剤や部位、個人の状態によって異なりますが、局所麻酔薬を用いた場合は比較的速やかに効果が現れることが多いです。ただし、効果の持続時間は薬剤によって異なります。炎症を抑える目的でステロイドなどを併用した場合は、効果が現れるまでに数日かかることもあります。
神経ブロック注射の効果はどのくらい持続しますか?
使用する薬剤によって大きく異なります。局所麻酔薬のみの場合は数時間から半日程度、局所麻酔薬に加えて炎症を抑える薬(ステロイドなど)を併用した場合は、数週間から数ヶ月程度効果が持続することもあります。
神経ブロック注射は痛みを完全に消し去ることができますか?
神経ブロック注射は痛みを和らげることを目的とした治療法であり、完全に痛みをなくすことができるとは限りません。痛みの種類や程度、原因によって効果は異なります。
何回くらい神経ブロック注射を受ければ良くなりますか?
症状や治療の目的によって異なります。1回の注射で痛みが軽減し、その後はリハビリテーションなどで改善が見込める場合もあれば、複数回の注射が必要となる場合もあります。
安全性について
神経ブロック注射は絶対安全ですか?
一般的には安全な治療法とされていますが、まれに副作用が起こることがあります(前述の「神経ブロック注射の注意事項・副作用」を参照)。
神経ブロック注射は痛いですか?
注射針を刺す際にチクッとした痛みを感じることがあります。
妊娠中でも神経ブロック注射を受けられますか?
妊娠中の神経ブロック注射は、原則として当院では行っておりません。
治療について
神経ブロック注射はどこに注射するのですか?
痛みの原因となっている神経やその周辺部位に注射します。
その他
神経ブロック注射以外に痛みを和らげる治療法はありますか?
薬物療法(飲み薬や点滴のお薬)、リハビリテーション、装具療法、手術療法など、さまざまな治療法があります。神経ブロック注射は、これらの治療法の一つとして選択を行います。
神経ブロック注射を受ける前に自分でできることはありますか?
事前問診をしっかり買いていただき、 既往歴や内服中の薬についても正確に伝えるようにしてください。