運動器エコーとは
運動器エコーとは、超音波画像診断装置(エコー)を用いて、筋肉、腱、靭帯、関節、神経などの運動器の状態をリアルタイムに観察する検査法です。
運動器エコーの特徴
非侵襲的
放射線を使用しないため、被ばくの心配がなく、繰り返し検査が可能です。妊娠中の女性や子どもでも安全に受けられます。
リアルタイム観察
組織の動きや状態を動画のように観察できるため、関節の動きに伴う軟部組織の変化や、筋肉の収縮などリアルタイムに評価できます。
迅速性
診察室で患者さんの目の前で検査が行え、結果をすぐに説明できることが多いです。
軟部組織の描出に優れる
レントゲンでは写りにくい筋肉、腱、靭帯、神経などの状態を詳しく観察できます。肉離れなどの筋肉の損傷においては、MRIよりも分解能が高いとされることもあります。
血管や神経の描出
ドップラー機能を用いることで、血管の血流や神経の状態を評価できます。
エコーガイド下治療
神経ブロック注射や関節内注射、ハイドロリリースなどの治療を行う際に、エコーで針の位置を確認しながら、より安全かつ正確に処置を行うことができます。
当院で導入している機器
コニカミノルタ社超音波診断装置 SONIMAGE MX1
高感度広帯域プローブ(L11-3)高感度化と広帯域化を両立するため、プローブ先端部にある音響整合層には、高度なシミュレーション技術で導き出した多層整合層構造を開発・採用しました。
高い分解能と深度を両立
T2HI® (Triad Tissue Harmonic Imaging)
独自開発の広帯域高周波プローブと画像エンジンを組み合わせ、帯域内に入ってくる多くの差音/和音/高調波を送受信することに成功、高分解能と深度を両立させ高画質を実現しました。
高画質を実現する
Dual Sonic®技術
T2HI®とDual Sonic®技術を組み合わせることで、受信領域の超音波ビーム中心付近にのみ高品質なTHI信号を生成することに成功。超音波の音響ノイズを抑制することで、浅部の描出改善と深部の視認性を両立します。
画像を最適化
MPA® 機能 (Multi Parameter Adjuster)
表示深度を変更するだけで、あらかじめ深度毎に設定された画質設定に変更することができます。例えば、表示深度を浅くすると高周波に、深くすると低周波や台形走査へ自動的に切り替えることができ、ワークフローの効率化に貢献します。
より安心な手技をサポート
台形走査機能
表示範囲を拡げることでオリエンテーションをつけやすくします。刺入の早い段階で針が表示されるので、より安心して針を進められます。高画質を維持したまま、台形走査をすることが可能です。
運動器エコーでわかる病気
肩
腱板断裂・損傷
肩の痛みや挙上が困難になる原因。
腱板炎(肩峰下インピンジメント症候群など)
腱板や周囲の滑液包の炎症。
上腕二頭筋長頭腱炎・脱臼
肩の前側の痛み。
肩関節周囲炎(五十肩)
関節包の肥厚や 可動域制限の原因となる癒着などが示唆されます(直接的な描出は難しい場合があります)。
石灰沈着性腱炎
腱の中に石灰が沈着し、激しい痛みを引き起こす。高エコーの石灰像が確認できます。
ガングリオン
関節周囲や腱鞘にできる液体が溜まった腫瘤。内部が低エコーの嚢胞として描出されます。
肘
肘部管症候群
尺骨神経の圧迫によるしびれや麻痺。神経の腫脹や周囲組織との癒着が確認できることがあります。
肘関節滑液包炎
肘頭などの滑液包に液体が貯留した状態。低エコーの液体貯留として描出されます。
手首/手
手根管症候群
正中神経の圧迫によるしびれや痛み。神経の腫脹や周囲の屈筋腱との関係が評価できます。
ばね指(屈筋腱腱鞘炎)
指の曲げ伸ばしが引っかかる、または固まってしまう。腱鞘の肥厚や腱の動きの異常が確認できます。
ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
手首の親指側の痛み。腱鞘の肥厚や腱の炎症が見られます。
ガングリオン
手首や指にできる液体が溜まった腫瘤。
股関節
単純性股関節炎(一過性股関節炎)
小児に多い、股関節の痛みで可動域制限を伴う。関節液の貯留が確認できます。
股関節唇損傷
関節唇の断裂や変形が描出されることがあります(MRIほど明瞭ではない場合があります)。
膝
変形性膝関節症
関節軟骨の菲薄化、骨棘形成などが間接的に示唆されます。関節液貯留も確認できます。
オスグッド・シュラッター病
成長期の脛骨粗面の痛み。骨端核の突出や周囲の炎症が確認できます。
ベーカー嚢腫
膝裏にできる液体が溜まった嚢胞。
その他
肉離れ(筋損傷)
筋肉の断裂や血腫などが確認できます。
神経絞扼障害(足根管症候群など)
特定の神経の圧迫部位や腫脹が確認できることがあります。
腫瘍(軟部腫瘍など)
筋肉や皮下組織にできた腫瘤の大きさや性状を評価できます。MRIほど詳細は確認できないことがあります。
炎症性疾患(関節リウマチ、滑液包炎など)
関節や滑液包の腫れや液体貯留、血流増加などが確認できます。
運動器エコーの注意点
運動器エコーは、骨の内部や関節の深部の評価には限界があります。
病変によっては、MRIやレントゲンなどの他の画像検査と組み合わせて診断する必要があります。
運動器エコーの
メリット・デメリット
メリット
- 非侵襲性・安全性: 放射線を使用しないため、被ばくの心配がなく、繰り返し検査や小児・妊婦への検査も安全に行えます。
- リアルタイム観察: 筋肉、腱、靭帯、関節の動きをリアルタイムに評価でき、病態の把握に優れています。
- 迅速性: 診察室で手軽に行え、検査時間も比較的短く、結果をすぐに説明できることが多いです。
- 軟部組織の描出に優れる: レントゲンでは描出しにくい筋肉、腱、靭帯、神経などの状態を詳細に評価できます。
- 血管・神経の評価: ドップラー機能により、血流や神経の状態を評価できます。
- エコーガイド下治療への応用: 注射や穿刺などの治療を、リアルタイム画像で確認しながら安全かつ正確に行えます。
- 比較的安価: MRIなどの他の画像検査に比べて費用が抑えられます。
デメリット
- 骨の深部や内部の評価が難しい: 骨の内部や関節内の詳細な病変(軟骨の変性全体など)の評価にはCTやMRIが適しています。
- 広範囲の評価には不向き: 一度に広範囲を観察することは難しいため、病変の全体像を把握しにくい場合があります。
- 体格の影響を受けやすい: 皮下脂肪が厚い場合や、骨の陰になる部分など、超音波が十分に到達しない部位では、画像が不鮮明になることがあります。
- 静止画での評価の限界: リアルタイムでの動きの情報が重要となるため、静止画だけでは十分な評価ができない場合があります。
- 深部の病変の描出能の限界: 体表に近い部位の軟部組織の評価には優れていますが、深部にある小さな病変の発見は難しいことが多いです。
運動器エコーとレントゲン
評価したい主な組織 | 適切な検査 | 理由 |
---|---|---|
骨 | レントゲン、CT、MRI | 骨折、脱臼、骨の変形など、骨自体の異常の評価に優れています。詳細把握にはCT、MRIが必要な場合もあります。 |
関節全体の構造 | レントゲン | 関節の隙間の状態、骨の位置関係など、関節全体の構造を把握するのに適しています。 |
軟部組織(筋肉、腱、靭帯) | 運動器エコー | 断裂、炎症、腫脹など、軟部組織の異常を詳細に評価できます。リアルタイムでの動きの評価も可能です。 |
関節内の液体貯留 | 運動器エコー | 関節水腫の有無や程度を確認できます。 |
神経 | MRI、運動器エコー | 神経の走行、腫脹、圧迫などを評価できます。 |
骨の初期の病変 | MRI、場合によりエコー | 疲労骨折の初期など、レントゲンでは分かりにくい骨の変化や周囲の炎症を評価できます。エコーでも骨表面の異常や血流変化などが示唆されることがあります。 |
関節軟骨の状態 | MRI | 関節軟骨の厚さや質的な変化を詳細に評価できます。レントゲンでは間接的な評価(関節裂隙の狭小化)しかできません。エコーでもある程度の評価は可能ですが、MRIほど詳細ではありません。 |
深部の構造 | CT、MRI | 骨の内部構造や関節深部の詳細な評価には、レントゲンやエコーよりもCTやMRIが適しています。 |
治療のガイド | 運動器エコー | 注射や穿刺などの際に、針の位置をリアルタイムに確認しながら安全かつ正確に処置を行えます。 |