秋に多いアキレス腱炎の症状と対処法
爽やかな秋風が心地よい季節となりました。
お子さんの運動会や地域のスポーツイベントなど、
体を動かす機会が増える方も多いのではないでしょうか。
しかし、久しぶりに走ったりジャンプしたりした後に
かかとの後ろ側に違和感、痛みを感じることはありませんか?
その違和感、痛みは、もしかすると「アキレス腱炎」かもしれません。
今回は、アキレス腱炎の原因から症状
そしてご自宅でできる予防法まで、解説していきます。
アキレス腱とは?なぜ炎症が起きるのか
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉と、かかとの骨をつなぐ
人体で最も太く、強い腱です。
歩く、走る、ジャンプするといった大事な動作に不可欠な役割を担っています。
このアキレス腱に、繰り返し過剰な負荷がかかることで
小さな損傷や炎症が起きるのが「アキレス腱炎」です。
特に、以下のようなケースで発症しやすくなります。
急な運動量の増加
普段運動をしない方が、急に全力で走ったり
長距離を走ったりすることで、アキレス腱に大きな負担がかかります。
準備運動不足
運動前にストレッチを十分に行わないと
筋肉や腱が硬いまま負担がかかってしまい、傷つきやすくなります。
不適切な靴の使用
サイズが合わない靴や、クッション性の低い靴は
足への衝撃を吸収しきれず、アキレス腱への負担を増やします。
加齢による変化
年齢を重ねると腱の弾力性が失われ、柔軟性が低下するため、損傷しやすくなります。
扁平足やハイアーチ
足の形によって、アキレス腱への負担が増加することがあります。
運動会で張り切って走り回ったり、久しぶりに地域のソフトボール大会に参加したりする際など、特に注意が必要です。
アキレス腱炎の主な症状
アキレス腱炎の主な症状は、次の通りです。
アキレス腱の痛み
かかとの上、アキレス腱のあたりに鈍い痛みを感じます
特に、運動開始時や、朝起きて最初の一歩を踏み出した時などに痛みが強く出ることが多いです。
熱感や腫れ
炎症が起きている部分に、熱を持ったり、腫れたりすることがあります。
押すと痛む
アキレス腱を指で押すと、痛みが強くなることがあります。
これらの症状は、安静にしていれば一時的に落ち着くことが多いですが、
放置して無理を続けると、痛みが慢性化したり、最悪の場合
アキレス腱が完全に切れてしまう「アキレス腱断裂」につながる危険性もあります。
違和感がある、痛いと思ったら!ご自宅でできる初期の対処法
「もしかしてアキレス腱炎かも?」と思ったら、まずは無理をせず、以下の初期対処法を試してみてください
1. 保護(Protection)
アキレス腱にさらなる負荷をかけないよう、患部を保護することが大切です。
無理な動きを避け、安静を保ちます。サポーターやテーピングを使うのも有効です。
2. 安静(Rest)
痛む動作は避け、安静を保つことが最も重要です。
ランニングやジャンプなどの運動は一時的に中止しましょう。
3. 冷却(Ice)
炎症を抑えるため、患部を冷やします。
凍傷に注意しながら、アイスパックや氷のうなどをタオルで包み
15~20分程度を目安に冷やしてください。これを1日数回繰り返します。
4. 圧迫(Compression)
包帯などで患部を軽く圧迫し、腫れや痛みを抑えます。
ただし、強く巻きすぎると血行不良になるため注意が必要です。
5. 挙上(Elevation)
足を心臓より高い位置に上げると、血液の循環が良くなり
腫れを軽減できます。寝るときに枕やクッションを使って足の下に敷くと良いでしょう。
この5つの頭文字をとって「PRICE処置」と呼びます
捻挫など他の怪我にも共通する応急処置なので、覚えておくと役立ちます。
ただし、これはあくまで応急処置であり、早めの整形外科専門医の診察が必要です。
アキレス腱炎の予防
アキレス腱炎を予防し、再発を防ぐためには、日頃からのケアが大切です。
1. ストレッチ
運動前後のストレッチは、アキレス腱の柔軟性を保つために非常に重要です。
ふくらはぎの筋肉をしっかりと伸ばすことで、アキレス腱への負担を軽減できます。
簡単なストレッチ方法
壁に手をつき、片足を後ろに引きます。
後ろに引いた足のかかとを床につけたまま、前足の膝を曲げ
ふくらはぎの筋肉が伸びるのを感じてください。
この状態を20秒程度キープし、左右交互に数回繰り返しましょう。
2. 適切な靴選び
運動する際は、自分の足の形に合った
クッション性の高い靴を選びましょう。
かかとのホールド力が高いものや、衝撃吸収材が使われているものがおすすめです。
3. 適度な運動
日頃からウォーキングや軽いジョギングなどで体を動かし
少しずつ運動量を増やすことで、アキレス腱を鍛えることができます。
急に激しい運動を始めるのは避けましょう。
こんな症状は早めに当院へご相談ください
ご自宅でのケアを続けても痛みが引かない
または痛みが強くなってきた場合
放置せず整形外科専門医を受診してください。
特に、以下のような症状が見られる場合は
重症化している可能性があります。
安静にしていても痛みが続く
足首の後ろが大きく腫れている
歩きにくくなるほどの強い痛みがある
「ブチッ」という音がして急に強い痛みが走った
当院では、患者さん一人ひとりの症状に合わせて、適切な診断と治療を提供しています。
超音波画像診断装置(エコー)などを使って腱の状態を詳しく調べたり
リハビリテーションによって根本的な原因を改善したり、スポーツ復帰に向けたサポートをおこなっています。
アキレス腱炎は、早期の対処と適切な治療で回復が期待できます。
違和感、痛みを感じたら無理をせず、どうぞお気軽にご相談ください。

