ぎっくり背中とは
ぎっくり背中は急に背中に激しい痛みが走る状態の俗称で、正式な医学病名ではありません。
主に背部の筋肉や筋膜の損傷によって起こると考えられています。
整形外科が
主な診療科となる理由
ぎっくり背中の主な原因が、筋肉や筋膜の損傷、椎間関節の捻挫など、運動器系の問題であると考えられるため、整形外科が第一選択となることが多いです。
しかし、ぎっくり背中のような症状を引き起こす原因は、運動器系の問題だけとは限りません。
以下の症状がある場合、整形外科以外の診療科目となる可能性が高いです。
- 高熱がある
- 吐き気や嘔吐がある
- 腹痛を伴う
- 排尿時の異常(血尿、頻尿など)がある
- 胸の痛みや圧迫感がある
- 手足のしびれや麻痺がある
- 原因不明の体重減少がある
ぎっくり背中の原因
ぎっくり背中の主な原因は、背部の筋肉や筋膜、靭帯などに急な負荷がかかることによる損傷と考えられています。日常生活の何気ない動作や、特定の状況下で起こりやすい傾向があります。
急な動作や無理な体勢
- 急に体をひねる、反らす
- 重い物を持ち上げる際の悪い姿勢
- 長時間同じ体勢での作業後の急な体勢変化
- スポーツや運動中の予期せぬ動き
筋肉の疲労や柔軟性不足
- 不良姿勢による慢性的な筋肉の疲労
- 運動不足や加齢による筋肉や関節の柔軟性低下
- ウォーミングアップ不足での運動
些細な動作
- くしゃみや咳
- 寝返り
- 椅子から立ち上がる
- 物を取ろうと手を伸ばす
- 顔を洗うなどの日常的な動作
これらの動作でも、筋肉が緊張していたり、体勢が不安定だったりすると、ぎっくり背中を引き起こすことがあります。
体調不良
風邪などで体力が低下している時なども、ぎっくり背中を起こしやすいことがあります。
過去の既往歴
過去にぎっくり背中を経験したことがある人は、再発しやすい傾向があります。
加齢
加齢に伴い、椎間板や関節、筋肉などが変性し、負担に弱くなることがあります。
飲酒
アルコールは脱水を引き起こし、筋肉の柔軟性を低下させる可能性があります。
ストレスが原因で
ぎっくり背中になる?
ストレスが原因でぎっくり背中になる可能性はあります。
ストレスは、直接的に背骨や筋肉を損傷させるわけではありません。
しかしながら、いくつかのメカニズムを介してぎっくり背中を引き起こすことがあります。
ストレスがぎっくり背中を引き起こすメカニズム
筋肉の緊張、痛覚の過敏化、自律神経の乱れ、姿勢の悪化、生活習慣の乱れなどが挙げられます。
ストレスによるぎっくり背中の特徴
ストレスが原因の場合、以下のような特徴が見られることがあります。
- 慢性的な肩こりや首こりを伴う: 背中だけでなく、肩や首の筋肉も緊張していることが多いです。
- 精神的な疲労感や倦怠感を伴う: 体の疲れだけでなく、精神的な疲労も感じやすいです。
- 天候や時間帯によって痛みの程度が変動しやすい: 自律神経の乱れが影響している可能性があります。
ぎっくり背中の初期症状
ぎっくり背中は、多くの場合、突然の激しい痛みとして現れるため、「これが初期症状だ」と明確に区別するのは難しいことがほとんどです。まるで電気が走ったような、あるいは何かで突き刺されたような、強烈な痛みが前触れなく起こることが多いです。
以下のような症状が前駆症状として出る場合があります。
- 軽い違和感や鈍痛
- 筋肉の張りやこわばり
- 動作開始時の痛み
- 特定の体勢での不快感
- 過去のぎっくり背中や腰痛の経験
初期症状を感じたら、まずは安静にして様子を見ることが大切ですが、痛みが強くなる場合は当院をお気軽に受診ください。
ぎっくり背中は
どのあたりが痛む?
ぎっくり背中は、背中の色々な場所に起こる可能性がありますが、特に肩甲骨と肩甲骨の間あたりや、肩甲骨の内側に痛みが出やすいです。背骨のすぐそば が痛むこともあります。
例えるなら、
- 肩甲骨の間: 背中の真ん中あたりが痛むことが多いです。
- 肩甲骨の内側: 背中の上の方で、肩甲骨の骨に近い部分が痛みます。
- 背骨(背中のまんなか)のすぐそば: 背骨のラインに沿って、筋肉がピキッと痛むような感じです。
これらの場所の筋肉や、背骨の関節などが、急な動きや無理な力で負担がかかり、炎症を起こしてしまい痛くなると考えられています。
痛む場所は人それぞれで、一部分だけが痛むこともあれば、背中の広い範囲が痛むこともあります。どんな風に痛むかも、「ズキズキする」「ピキッとする」「重くてだるい」など、色々あります。
もし、背中に急な痛みを感じたら、無理せず安静にして、痛みが続くようなら当院をお気軽に受診ください。
ぎっくり背中の検査・診断
レントゲン検査(X線検査)
一般的に、ぎっくり背中の診断において最初に検討する画像検査です。レントゲン検査では、主に以下の情報を得ることができます。
骨折の有無、骨の状態の確認、骨の配列の異常、椎間腔の狭窄などを確認します。
重要な点
ぎっくり背中の多くは、筋肉や靭帯などの軟部組織の損傷が原因と考えられており、レントゲン検査では異常が見られないことも少なくありません。しかし、重篤な骨の異常を除外するために、基本的な検査として行われることが多いです。
超音波検査(エコー検査)
整形外科によっては、ぎっくり背中の検査として超音波検査(エコー検査)を行う場合があります。
エコー検査は、以下のような情報を得るのに役立ちます。
筋肉や筋膜の状態の
評価内出血
リアルタイムでの観察、必要時にブロック注射を行うことができます。
エコー検査は、レントゲン検査では評価できない軟部組織の状態を評価できるという利点があります。しかし、骨の深部や背骨の内部の評価には限界があります。
その他の画像検査
状況次第では、MRI検査を行うことがあります。MRIは軟部組織の描出に優れており、椎間板ヘルニア、靭帯損傷、神経の圧迫などを詳しく評価できます。
ぎっくり背中の治療
ぎっくり背中の治療は、痛みの程度や症状の段階によって異なりますが、主に以下の方法が行われます。
受傷直後~数日
- 安静、適度な冷却
- 鎮痛薬: 痛みが強い場合は、医師の処方または指示に従い、内服薬(痛み止め、筋弛緩薬など)や外用薬(湿布、塗り薬など)を使用します。市販薬を使用している場合は診察時にご提示ください。
- コルセット・サポーター: 痛みが強い時期に、背中をサポートするコルセットやサポーターを一時的に使用することがあります。ただし、長期間の使用は筋力低下を招く可能性があるため、痛みが和らいできたら徐々に使用時間を減らしていきます。
数日~数週間
- 温熱療法: 痛みが落ち着いてきたら、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、回復を促します。蒸しタオル、カイロ、入浴などが有効です。
- ストレッチ・軽い運動: 痛みが軽減してきたら、徐々に背中や腰周りの筋肉を優しく伸ばすストレッチや、軽い運動(ウォーキングなど)を開始します。無理のない範囲で行い、痛みを感じたら中止しましょう。
- 理学療法・リハビリテーション: 医師の指示のもと、理学療法士による専門的なリハビリテーションが始まります。
- 電気治療、マッサージ、運動療法などを行い、痛みの軽減、可動域の改善、再発予防を目指します。
- 姿勢指導: 正しい姿勢を保つことは、再発予防のために重要です。
再発予防
- 運動療法の継続: ストレッチや筋力トレーニングを継続することで、背中周りの柔軟性や筋力を維持し、再発を予防します。
- 生活習慣の改善: 長時間同じ姿勢を避ける、重い物を持ち上げる際の正しいフォームを身につける、適度な休息と睡眠をとるなど、生活習慣を見直します。
ぎっくり背中になったら
お風呂に入って良い?
ぎっくり背中の状態によって、お風呂の入り方は注意が必要です。
受傷直後~2、3日程度で、炎症や痛みが強い時期
基本的には短時間のシャワー程度にとどめておくのが無難です。
湯船に浸かると、温めることで血行が促進され、炎症を悪化させてしまう可能性があります。
どうしても湯船に浸かりたい場合は、ぬるめのお湯に短時間つかるだけにするようにしましょう。熱いお湯や長時間の入浴は避けてください。
湯船から出る時や、洗い場で体を動かす際には、ゆっくりと慎重に行動し、背中に負担をかけないように注意が必要です。
痛みが少し和らいできた時
状態を見ながら、温かいお風呂に短時間浸かるのは、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。
まだ痛みが強い場合は、無理せずシャワーだけにしておきましょう。
お湯の温度はぬるめにし、10分程度を目安にしましょう。
熱すぎるお湯や長時間の入浴は、かえって痛みを悪化させる可能性があります。
お風呂から出る時も、ゆっくりと体を支えながら立ち上がりましょう。
共通の注意点
判断に迷う場合や、入浴によって痛みが悪化する場合は、無理せずシャワーだけにしておくことをお勧めします。